ドカ雪の翌日、ワンフェスに行ってきた。我が模型部の校外学習だ。
エアブラシを買って満足し、小康状態になった危機的状況を打開するべく打って出た。
部員であるヨッシーと西船橋駅で13時に待ち合わせをして、一旦、駅ナカのベッカーズカフェで作戦会議である。ちょっとしたミーティングを済ませ、そこから京葉線の海浜幕張駅方面のホームに向かう。
京葉線全線運休
という電光掲示板を見て、我々は愕然とする。ドカ雪はすでに溶け始めて、電車は動き出しているのだが、京葉線だけは、別メニューで調整しております的な感じだ。ここでいくら待っても一向に動く気配がない。
ならばと今度は、幕張本郷駅に向かい、バスでの海浜幕張駅へのアプローチを試みる。しかし、駅のロータリーには、バスもタクシーも全く姿を見せない。
そんなアホな。
我々は次に幕張駅に向かった。実は直線距離なら幕張本郷駅より、幕張駅のほうが、海浜幕張駅に近い。
幕張駅は鬼のように小さい駅で、タクシー乗り場は雪に埋れていた。バス乗り場を探すとバスロータリーまで徒歩2分と書いてある看板を見つけた。この雪の中で徒歩2分は意外と遠い。微かな可能性を信じて我々は雪の中を行軍した。
気分は八甲田山である。
シャーベット状になった雪の上を線路に沿って進むと、バスのお尻が見えてきた。嗚呼!神は見捨てなかったのだ。バスロータリーまで着くと、案内係のオババがイキりながら、乗客と運転手を操っている。
女優で言うと「ふぞろいの林檎たち」に出ていた仲手川家の小林薫の病弱な嫁、根岸季衣をストロングスタイルにした感じだと思って間違いない。
▼根岸季衣さん
脱出不可能の要塞型牢獄の司令官のようにホウキを手にオババは君臨する。バスオタクのアタマがイカレた兄ちゃんを鞭で一撃しながら、司令官のオババは大声でこう言い放った。
いいかい、アンタら!
生きてここ幕張駅から出たかったら、アタイの言う通りにしなっ。
後ろから来た地味なカップルは、他のルートがないか、司令官のオババに質問したが、答えはこうだ。
他のルートなんてあるわけないさ、海浜幕張駅に行きたいなら、このバスに乗りな。必ず連れてってやるから。まずは、ここじゃSuicaだのPASMOだののICカードは一切通用しないよ!バスに乗ってここから脱出するには、現金か回数券だけ!
160円を握りしめてここに並びな!
俺たち囚人全員は財布を開けた。しかし、残念ながら俺の財布の中には100円玉が2枚と50円玉が2枚しか入ってなかった。
ここから生き残りゲームは始まっているのだ。今、何より10円玉が欲しい。50円玉と取り替えてもいい。ちょうどヨッシーが10円玉を2枚持っていたので、そいつを譲り受けた。
バスオタクのイカレタ兄ちゃんは、障害者手帳を出して160円のバス代を更に半額に値引こうとして、列から飛び出し訴えたが、司令官のオババは一切取り合わなかった。
俺は160円を握りしめながら、バスを待った。平静を装っているヨッシーも実はジャンバーのポッケの中で160円を必死に握りしめていたらしい。
ドゴドゴドゴドゴ。
バスは来たが、「花島公園行き」と書かれていて、隣のバスレーンにゆっくりと入っていった。恐らく千葉の何処かに行くのだろうが、もう43年も千葉に住んでいるが、花島公園がはたして千葉県のどの辺りにあるか、皆目見当がつかない。
ヨッシーはその花島公園という夢のような字面に誘われて、危なく隣のレーンに行きそうになったが、とっさに俺はフルネルソンで止めた。そのままドラゴンスープレックスに持っていこうとしたが、左脚を脛に絡ませ、投げには持っていけなかった。
▼フルネルソン状態
しばらくして、幕張駅脱出用のシャトルは現れた。頼もしいことに後輪にチェーンを巻いていた。こいつが物凄いノイズを撒き散らしながら走っているのだ。
ドゴドゴドゴドゴ。
散々たら待ったので、この爆音ノイズがワルキューレの騎行にしか聞こえなかった。
だが、バス停は長蛇の列。脱走兵も半分しか乗り切れず、我々の目の前で満員となった。すると我々死に損ないのジオン残党に司令官のオババはこう言い放った。
安心しな!
もう1便すぐに来っから。
我々はほっとした。と、同時に確かに3台まとめてやって来た。
バスには「千葉シーサイドバス」と書いてあった。どうやら京成バスでもJRでもないらしいのだ。
シーサイド。
独立系バス会社。
シーサイドバスなんて名前は、今まで全く聞いたことがなかった。
後ろのバスオタクのイカレタ兄ちゃんは「あ、ボクはレアなあっちの臨時バスに乗ってもいいなぁ」と司令官のオババに話しかけていたが、オババはガン無視である。そして、死神たちの列に対しこう言い放った。
整理券を必ず取って行きな。
海浜幕張駅に行きたきゃ、現金で160円だよ。
あばよ!
このバスは始発ではないようだった。幕張本郷から出ていたらしく、数人がすでに乗っていた。しかし、我々は列のほぼ最前だったので、余裕で座席に座れた。
運転手はネコだったような気もしたが、そんなことはお構いなしだ。これで、なんとか幕張メッセまで辿り着ける。
そう、ワンダーフェスティバル2014[冬]の会場に。
14時15分、ドゴドゴドゴドゴと轟音を響かせてバスはゆっくりと動き出した。
脳震盪を起こしそうなチェーン装着バスの上下の激しく細かい揺れに耐えながら、俺はシーサイドジェットシティを後にした。
ホウキを手にしたオババが少しづつ小さくなってゆく。
時速5マイルのメタル・クリスタル。
ヴィーナスパンクのシーサイドジェットシティ
ワンフェスにいてきた【幕張メッセ会場編#1】へつづく
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ワンフェスにいてきた【シーサイドジェットシティ編】
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