大山登山の最終打ち合わせだ。
それは、火曜日に船橋の加賀屋で行われた。会社でイスを並べて寝た翌日である。どうにも体調が悪いのだが、大事な打ち合わせだから参加した。今回、僕が受け持つ当番は秦野駅で集合した12人を大山まで案内する仕事だ。他の2人は先に頂上に行ってカレーを作る当番。僕もカレーを作る当番がいいのだが、大山集合から先導する適任者がいない。全員の顔を知っている僕がやっぱり先導することになったのだ。
加賀屋で煮込みとレバ刺しを食べながら初摘みホップの一番搾りを飲む。
▼写真はいちいち面倒なので過去のものを流用しております
今日も元気だビールが美味い。そして、普段は騒音の塊のような、この加賀屋の店内が意外と静かだった。僕はチャーリーブラウンに似たカメラマンのN氏に「今日の加賀屋は静かで打ち合わせが進みますねー」と言った直後だった。
バカヤロー!
このクソバカヤローが!
という怒声が店内に響いた。
僕らの席の真ん前にいるジイサンが友達のジイサンに向かって人目をはばからず叫んでいる。
その怒鳴ったジイサンがあまりにも大島渚監督に似ていたので、思わず初摘みホップを吹いてしまった。
▼大島渚監督
大島ジイサンはさらにジイサンの胸ぐらを掴んでいる。いや、喉輪落としのムーブに近い。七十も超えたジイサンのリアルファイトだった。結局、大島ジイサンはその後、周りの客に「すみませんでした」とか言いながら、ジイサンを置いて帰ってしまった。
「すみませんでした」言うならケンカするなや。
へべれけ監督である。
しかし、一瞬の静寂の後はイッキに店の空気がいつものようにウルサクなってしまった。
一方、我々の隣りの席はキラーカーンに似たジイサンと小柄なモンチッチに似たバアサン。
▼キラーカーンさん
我々が大島ジイサンの喧嘩の影響を受けて、柔道と柔術、合気道と古武道の話しをしていた。巨悪を追うジャーナリストのI氏は合気道二段なのだが、本当に最強なのは寝技のある格闘技だという持論を展開し始めた。
柔道と柔術と七帝柔道。そして中井祐樹vsジェラルド・ゴルドー戦。そんなコアな格闘技の話しをしていると、突然、隣りのバアサンがキラーカーンジイサンに向かって大きな声で・・・
「あんた、あんた、居ないと千葉県警は弱くなるわよ。いつ稽古つけんの?」
などと物騒な事を店内に聞こえるような声で言ってる。
さらにモンチッチオババは畳み掛ける…
「バカ極真なんて本当に弱いわよ。あんなバカ極真」それを受けて、キラーカーンはただ頷いているだけである。
ウェルウェルウェル
おい、モンチッチババアよ!
間違ってもこんな居酒屋で「バカ極真」なんて良く言えたもんだな。もしこの場に若い極真カラテの使い手の方がいたら、大変な惨事になっているぞ。キラーカーンがどんなに強くても七十を超えた老人だし、さらにはババア、オマエなんて文字通り一撃だろう。
そう、ババアもさっきの大島ジイサンばりに酔っていたのだった。
へべれけ婆様である。
そして、モンチッチババアが威張る全ての元凶、県警に武道を教える、加賀屋最強キラーカーンジイサンも帰り際、酔っぱらって、よろめき、隣りの席の人の背中に手を付いてしまってペコペコ謝っている。
へべれけ格闘家である。
しかし、ババアと違い、キラーカーンの姿勢は常に謙虚だった。そこから、彼が本当の武道家なのが垣間見えた。
我々も店を出て、巨悪のI氏の提案で〆のラーメンを食べることにした。僕は博多屋台「豚がんちゃん」船橋店に2人を連れて行き、まずは生ビールとなめろうを頼んだ時だった。
べろんべろんになった巨悪のI氏が「ここは東京ですか?」と尋ねてきた。僕とカメラマンN氏は「船橋です!船橋です!」と慌てて答える。そして、しばらくすると巨悪のI氏は立ち上がり「%$#△&・・・それじゃ!」と何事かを言って帰ってしまった。我々はビタイチ腹が減ってなかったので、ラーメンも喰わずにビールだけを飲んでI氏を追うようにして帰った。
へべれけ登山家である。
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へべれけ船橋加賀屋最強格闘王決定戦
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