銀座で呑んだ。
デザイナーの草津氏と千日屋という何の感動もない居酒屋で酒を飲んだ。草津氏はお酒を飲む前に、改まって話しがあるという。
何かと訊ねると…
そろそろハッチさんも独立しないかと。
草津氏は、超有名なデザイン事務所から満を持して独立したのだが、僕はそんな才能も無い。だけど、仕事を紹介してくれるという。草津氏が忙しくて断ってきたDTPという印刷前の組版の仕事を僕が代わりに受けるという感じだ。
彼も助かるらしく、僕の収入も4倍くらいは余裕で増えるというのだ。ただし、メインの職種が変わる。
DTPオペレーターを
やらないかという話しだった。
とりあえず今は、デザインの仕事も死ぬほど暇だし、悪い話しではない。むしろ渡りに舟な感じなのだ。このまま黙って、会社が倒産して無職になるよりは、前へ進んだ方がいいと思う。色々な手続きを踏んで、僕も一歩踏み出すことにした。
まだ決まった訳ではないのに「独立記念」として、無理矢理に銀座のブギウギへ行こうという。この時すでに時計は0時を30分ほど回っている。
家に帰ることは諦めた。
銀座のバー、ブギウギに着いて、速攻ソファーでいつものように寝ようとすると、草津氏から“物言い”が付いた。もちろん、これから「恩人」になろうとしている人の言うことには逆らえないので、寝ないでカウンターで呑むことにした。
カウンターには、ノンケが僕、草津氏、おさむちゃん。そして、女装趣味のおじさん、太ったオカマちゃん、オカマバーのママさん、イケメンのオカマちゃん、美しすぎるニューハーフさん、と総勢8人がいる。僕たちは一見華やかな女性に囲まれているように見えるのだが、全員がオッサンということに気がついてしまった。
とほほ。
しかし、ニューハーフのレイラちゃんはモノが違った。佐藤かよクラスのモデル並みの容姿で、近づくといい匂いがする。声帯もまんま女性なのだ。みんなが、やいのやいのとはやし立てるので、恋人気分で彼女の隣りの席に座ってみた。目を見つめ合って、頭を撫で撫でされた瞬間にグラッと落ちそうになった。
そう、恋に。
さて、呑めや歌えやのドンチャン騒ぎになり、何故か僕のあだ名がブラザートムになっていた。
時計を見ると4時30分だった。草津氏が寝ている間に抜け出し、つけ麺を食ってまた戻るという離れ技を思いついた。
▼桔梗のつけ麺(普通盛)
前回の大失敗を踏まえて、今回は大盛を回避して普通盛を注文したら、とっても美味しかった。
そして慌ててまたブギウギへ。
草津氏がいない!
太ったオカマは無下にも「帰った」という。
慌てて電話して追いかけたら、銀座アップルストアの前で待っていてくれた。トイレをしていたと嘘をついて、いつもの草津氏の事務所、通称「あったか村」に仲良く帰った。
結局、10時まで惰眠を貪った。
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銀座で禁断の恋
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